2023.3.29
2023年3月29日午後1時10分、さいたま地方裁判所第4民事部(倉澤守晴裁判長)は、保護費の減額処分の取消しを命じる原告勝訴判決を言い渡しました。
これまでに言い渡された17の判決のうち、2021年2月22日の大阪地裁判決、2022年5月25日の熊本地裁判決、同年6月24日の東京地裁判決、同年10月19日の横浜地裁判決、2023年2月10日の宮崎地裁判決、同年3月24日の青森地裁判決、和歌山地裁判決に次ぐ、8例目の勝訴判決となります。
昨年5月の熊本地裁判決からは7勝1敗、昨年10月の横浜地裁判決からは5連勝です。勝率は4割7分で、あと1つ勝てば5割に達し、前半込んでいた負けを巻き返すのも時間の問題です。
ただ、さいたま地裁判決は、これまでの全ての勝訴判決がその違法性を認めていた「デフレ調整」(物価考慮)については国側の主張を鵜呑みにして違法性を否定する一方、生活保護基準部会が行った「ゆがみ調整」の検証結果を2分の1に限って反映させた処理について違法性を認めるという変則的な内容でした。
前者は、「統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性」の審査を求める老齢加算訴訟最高裁判決の規範を無視し、デフレ調整の問題点の本質を理解しない判断であって到底容認できません。
しかし、後者の2分の1処理については、増額されるべき場合の増額幅を半減させるもので、格差是正という「ゆがみ調整」の趣旨と相容れない旨の正当な判断を示した点で大きな意義があります。2分の1処理の違法性を認めたのは、熊本地裁、和歌山地裁に次ぐ3例目となります。
判決後にもたれた記者会見で、小林哲彦弁護士は、「結論的に勝訴だったのでほっとしている」としつつも、デフレ調整について、「統計不正だと思っている。(違法性が)認められなかったのは不当だ」と厳しく批判しました。
また、原告の佐藤晃一さんは、亡くなった原告の遺影を掲げながら、「あきらめないで良かった。天国の仲間も喜んでいる」と声を震わせました。遺影の原告は、敗訴判決が続く中、最初の勝訴判決だった大阪地裁判決の記事を枕元に置いて亡くなっていたといいます。佐藤さんは、8年以上の裁判で原告9人が亡くなっていることをふまえ、「国は裁判を長引かせず、政治判断で解決してほしい」と訴えました。
さいたま地裁の原告団、弁護団は、3月24日に勝訴判決を得た青森地裁、和歌山地裁の原告団、弁護団、いのちのとりで裁判全国アクションとともに、3月30日、厚生労働省に要請行動を行います。