2023.5.27
2023年5月26日午後3時、千葉地方裁判所民事第3部(内野俊夫裁判長)は、千葉県内の生活保護利用者12名が千葉市ほか8自治体を被告として提起した裁判で、保護費の減額処分の取消しを命じる原告勝訴判決を言い渡しました。
これまでに言い渡された21の判決(うち1つは高裁判決)のうち、2021年2月22日の大阪地裁判決、2022年5月25日の熊本地裁判決、同年6月24日の東京地裁判決、同年10月19日の横浜地裁判決、2023年2月10日の宮崎地裁判決、同年3月24日の青森地裁判決、和歌山地裁判決、同年3月29日のさいたま地裁判決、同年4月11日の奈良地裁判決に次ぐ、10例目の勝訴判決となります。
直前の4月14日の大阪高裁で逆転敗訴判決が出たことの影響が危惧されましたが、「裁判官の独立」性を示し、その流れを断ち切る判断でした。地裁レベルでは、勝敗数は10勝10敗と再度拮抗し、昨年5月の熊本地裁判決からは9勝2敗と、潮目の変化はなお堅調で、大阪高裁判決の特異性が際立つ結果となりました。
本判決は、基準改定が基準部会による審議検討を経ることなく行われた場合には、国の側が、当該改定が合理的におこなわれたことについて十分な説明をすることを要するとしたうえで、「デフレ調整(物価考慮)」で用いられた「生活扶助相当CPI」が生活保護受給世帯の消費構造を適切に反映しているとは認められず、「ゆがみ調整」に含まれている生活扶助基準額の水準の改定との整合性もないとして、厚生労働大臣の判断過程及び手続に瑕疵があると判断しました。
判決後に開いた記者会見で、原告の水野哲也さんは、「当然の判決だ」と喜んだうえで、「厚労省に(生活保護受給者の)生活実態とニーズを知ってほしい」と訴えました。また、別の原告の女性は、「訴えが認められ嬉しいです。全国でも早く引き下げが取り消されることを願っています」と話しました。
本判決に続いて5月30日に言い渡された静岡地裁判決も原告勝訴でした。地裁レベルでは11勝10敗と勝ち越し、潮目の変化はより一層確実となりました。